谷川岳 西黒沢


2012,8,13

参加メンバー:仙人,ドクター,幻舞

装備:ハーネス,スリング,カラビナ,ロープ(9mm 50m),ハンマー,ハーケン2枚
 
 夏合宿の当初の予定は滝谷第4尾根だったが、天気予報が芳しくなく、メンバーそれぞれの都合もあって、お手軽に日帰りの沢登りに予定変更となった。

 西黒沢は、谷川岳ロープウェイのすぐ下を流れている沢で、積雪期は山スキーの滑走ルートになるため、山スキーヤーの間では知られた沢だ。

 しかし、沢登りとなるとほとんど情報がない、沢登りの対象となる沢が多い谷川岳で、しかもロープウェイの真下で入渓地点は駐車場から歩いて10分という場所であるにもかかわらず、沢登りを目的に入渓する人は非常に少ないようだ。

 今回の山行にあたって、山行計画はいつもの通り仙人が立てたが、その際にネットを検索してもいくつかの遡行記録がヒットしただけで、他の沢のように「よりどりみどり」とは行かなかったようだ。

 しかし、数少ない情報と、西黒沢が谷川岳遭難防止条例の「登山届け事前提出」エリアからも外れており、難易度としてはたいしたことはないと判断、ロープを出すのもせいぜい1〜2回とふんで、ハーケンは2枚のみとした。

 ここで問題となるのが幻舞である。百戦錬磨の仙人と「元孤高の沢屋」のドクターは、このような「情報が少なく」「沢の状況や詰めがどうなっているのか分からない」沢を『面白い』『登りがいがある』と感じるが、沢に限らず、バリエーションは付け焼き刃の幻舞は基本「沢は癒し系」であり、このような「行ってみなければ細かいことは分からない」沢を楽しいと感じる余裕はない。

 
 
 5:30頃に行動開始。国道を渡ってすぐに入渓してもよいが、ゴーロが続くだけのようであるし、おじさんトリオなので体力消耗を防ぐことにして、しばらくは沢沿いの登山道を行くことにする。

 しかし・・・・仙人とドクターは前夜祭のアルコールが残り、幻舞は前日のチャリンコヒルクライムの疲労が抜けず、そこに蒸し暑さが加わって、スタート直後から情けないくらい気合いが入らない。

 登山道が沢と離れ始める所から入渓。どうも最初の滝はパスしてしまったらしい。入渓後、しばらくは代わり映えのしないゴーロ帯が続く。
 
 
   
 このあたりを遡上していたときは、最後までこの程度のレベルが続くと思い込んでいた。

 天候は曇り。このあたりの視界は良いが、山頂はガスの中。

 曇りとは言え、さすがにこの時期は蒸し暑い。
 




 雪のブロックが姿を見せ、奥には滝が。この辺からそれらしい雰囲気になってくるが、まだ余裕がある。
   
 ロープを出したのはこの滝が2カ所目だったと思うが、余りよく覚えていない。ということは、いずれにしても1カ所目はたいしたことはなったと言うこと。

 沢ではBJがトップを切るのが定番。この滝もBJがトップで突破してロープを張る。水流のすぐ右側からも行けそうに見えるが、支点が全くないため、落ちたらそれこそ一大事。ここは右側の草付きを巻いた。

 


 この滝の出口には真新しいリングボルトが2本打ってある。

 仙人も右側の草付きを巻いたが、BJから「正面を登ってみれば」と声をかけられた幻舞は、水流の右側を直登。なんとかテンションを掛けずに突破したが、トップで登となると、途中に3カ所くらい信頼できる支点がないと厳しい感じ。


 この滝が西黒沢の核心という情報もあったのだが・・・・・・

 この後も同レベルの滝が何カ所かあり、ロープのお世話になる。
 
 
 80mの大滝。熊穴沢との分岐あたりにドドーーーーンと立ちはだかっているのがこの大滝。角度があまりないので、登るのは比較的簡単であるが、これを登ってしまえば(今回の装備では)引き返すことはまず不可能。
 


 大滝の出口は濡れて滑りやすく、ここでロープを出してBJに確保してもらう。 
   
 
80mの大滝を過ぎた後、突然目の前に現れたのがこの巨大な雪のブロック。そしてこのブロックの先には・・・・


 この滝が待っていた。結果的には写真の通り右側の壁を突破したが、それまでには左側のスラブを登って天神尾根の支尾根に出て、灌木ターザンで天神尾根に出る案とどちらを取るかかなり迷った。

 しかし、左側の壁は登ってみないと状況がわからない面があったのと、ブロックを登って滝の直下まで近づいてみたら、滝右側の壁が登れそうだったこと。仙人がこの滝を登っている写真をHPで見ていたのとで、滝を登ることにした。



 この滝を何とか登り、もうこれでロープのお世話になるような場所は終わりだろうとの期待もむなしく、更に困難な滝が待ち構えていた。

 天気が良く、岩が乾いていれば何とか登れそうではあったが、この頃には断続的に強い雨が降ってきたり、ガスがかかったりと天気も悪く、最悪の場合は急な増水に見舞われる可能性も強くなってきた。

 しかし、天神尾根側はつるつるのスラブで登ることは不可能。状況を観察し協議した結果、右側の草付き斜面を登って熊笹の茂った尾根に出て、そのまま尾根伝いに登ることになった。

 谷底という地理的な条件と濃いガスとで見通しがきかず、この尾根が何処に続いているのか絶対の確信はなかったが、3人とも何度も登っている谷川岳であるし、特に百戦錬磨の仙人には西黒尾根ザンゲ岩に続く尾根であろうことは容易に想像できた。

 また、そうだとすれば途中に大きな谷はなく、50mのロープがあれば行き詰まることはないであろうことも予想できたが、問題はこのような不確実要素が多い状況の経験がほとんどない幻舞の精神状態だ。

 悪い草付き泥斜面をBJが登り、熊笹帯に出たところでロープ投げて仙人,幻舞を確保。しかし、なかなかロープが手の届く範囲にこなくて、何度もやり直す。

 3人が尾根に出て、後はひたすら熊笹と低灌木の藪漕ぎ。かなりの急斜面で、手がかりとなる密生した熊笹がなければとても登れなかったろう。

 濃い藪で数mも離れるとお互いの姿が見えなくなるため、頻繁に声を掛け合ってお互いの位置を確認しながら、先の見えない藪こぎが延々と続く。先の状況が見えていたり、見えないまでも確実に登山道に合流できることが分かっていれば、まだ余裕が持てるが、
このような状況だと仙人やBJはともかく、修羅場の経験がほとんどない幻舞は精神的に追い詰められている。

 2時間半くらい経過しただろうか?一瞬ガスが切れ、見慣れた西黒尾根ザンゲ岩が姿を現した。見える範囲では途中に1カ所、脆そうな岩が露出した場所があるだけで、後は熊笹をかき分けていけばよさそうだ。

 見通しがついたところで休憩を取り、フェルトシューズをアプローチシューズに履き替えると、さすがにフェルトシューズよりも格段に歩きやすく、先の見通しがついたこともあり、若干ペースも速くなった。

 熊笹をかき分けていくと、唐突に西黒尾根登山道に出た。ザンゲ岩の急登が終わり、登山道の角度が緩くなったあたり。時間は16時ちょっと前。4時間弱の藪こぎであった。


 

メニュー




home





inserted by FC2 system