木曽駒ヶ岳 西横沢
 
2014年9月28日

参加メンバー:仙人、BJ、幻舞
 

 当初はお盆休みの予定だったが、8月の悪天候で秋の気配が感じられる今日まで延期となっていた。しかし、結果を見れば西横沢の遡行はこの時期が大正解で、好天と相まって素晴らしい紅葉を堪能しながらの沢登りとなった。

 3時半頃にシャトルバスの始発駅である菅の台駐車場に到着。前日の御嶽山噴火の影響は全くなく、ここまで来る途中の中央高速で災害派遣の自衛隊車両を見かけた程度。我々が到着した時点で駐車場は8割方埋まっていた。

 バスの始発は5時ということで仮眠を取ることにしたが、駐車場に入ってくる車のエンジン音と、ひっきりなしに聞こえる車のドアを開け閉めする「バタンッ」という音で仮眠どころではなく、ただ目をつぶって横になっているだけの状態。仮眠を取ることを諦めた仙人が外の様子を見に行くと、まだ4時を過ぎたところだというのにバスの順番待ちの長い列が出来ていた。

 ロープウェイの順番待ちをなるべく少なくするために早めに並んでいるようだ。ロープウェイには乗らない我々はあまり関係ないが、仮眠も取れそうにないのでバス待ちの列に加わることにした。

 西横沢は終了点から千畳敷まで、廃道となっている登山道を歩くことになるため、普通ならアプローチシューズを持って行くところだが、3人とも沢シューズまま歩くことにしてアプローチシューズはなし。この辺がゴムソールのウォーターテニーの強みだ。

 ゴムソールの沢シューズについてはひと頃かんばしくない評価が一般的であったが、ウォーターテニーに関して言えば、茶ゴケに対してのフリクションはなきに等しいものの、それ以外の場所ではフェルトソールに劣っているという感じはない。むしろ乾いた岩や草付きでのフリクションはフェルトソールの比ではなく、トータルで考えればフェルトソールより有利だと思う。

 バスに揺られること30分でしらび平駅に到着。我先にロープウェイに向かう人たちを尻目に、我々は林道を100mほど逆戻りして入渓点へ。
   

 西横沢への入渓地点「しらび橋」

仙人とBJが降りられそうなところ探しながら歩いている。

 入渓は6時半頃。さすがにこの時期の6時半は夏の暑さに慣れた体にはかなり寒く、BJと幻舞は早々にカッパを着込む。 


 入渓してすぐに砂防堰堤を2つ越えるが、最初の堰堤越えで早くも間違った踏み跡に誘導されてしまい、灌木ターザンを強いられる。

 この最初の堰堤越えがこの日の核心部だった
 
 2つめの堰堤を越えるとなにやらたき火の煙が見える。近づいてみると昨夜沢でテン泊したパーティのたき火だった。様子から彼らも今日西横沢を遡上するようだ。

 西横沢はそれなりに人気のある沢らしいので、この日は入渓するパーティもそこそこいるのでは?と思っていたが、この日沢でであったパーティはこのテン泊組だけだった。


 事前に調べた西横沢の情報では、核心は30mの大滝で、他は特に技術的に困難な滝はなく、大滝以外では初級者混じりのパーティが何カ所かの滝でロープを出している程度で、足並みの揃ったパーティだと大滝もノーロープで越えているようだ。

 また、遡行図と地形図から判断して右俣か左俣か判断に迷いそうな二俣は2カ所で、東横沢との分岐と大滝上の分岐。特に大滝上の分岐は要注意ポイントで、最終的に千畳敷に出ることを考えれば左俣へ進みたくなるが、ここは右俣が正解。

 今回は遡行図と地形図の他にも頼りになるアイテムを用意した。そのアイテムは「スマホ」+「地図ロイド」の組み合わせ。

 電子機器が苦手なTeam Moss-Backは、つい最近までみなガラケーを愛用していた。しかし、まず仙人と幻舞が共通の知人から「スマホ」+「地図ロイド」の威力を見せつけられてスマホに乗り換え、タイミングよく(?)ガラケーを水没させたBJもいい機会とばかりにスマホに乗り換え、わずか一ヶ月の間に3人ともガラケーからスマホに乗り換えとなった。

 ガラケーでの経験から、所詮スマホのGPSなんておまけみたいなもので、山では尾根ならともかく、ちょっと谷筋に入ってしまえば全く役に立たないと思っていたがこれが大間違い。スマホのGPSはたいしたもので、この日も沢の中で30秒くらいで正確に現在位置を示してくれた。


   
 ここが「たぶん」東横沢との分岐で西横沢を写したものだと思う。

 遡行図やら地形図やらを引っ張り出して西横沢が左俣であることを確認。

 しかし、東横沢は分岐からすぐのところに特徴的な滝があるため、事前にネットなどで写真を見ておけばまず間違えることはない。
   
 
 
 
                  西横沢の核心、30mの大滝。場所は地形図@の位置。

 入渓から1時間ほどで西横沢の核心と言われている30mの大滝に達する。滝の難易度であるが、結果から言えばロープを出すまでもなく滝左側の乾いた部分を登ることができた。ホールドも豊富というほどではないが、探せばカチホールドは結構あるので「サクッと簡単に」というほどではないが、ノーロープでも緊張を強いられるほど難しくもない。

 こういった乾いた岩のクライミングではアクアステルスソールの強みが遺憾なく発揮される。乾いた岩でのフェルトソールとは比較にならないバツグンのグリップにより、ホールドが心許ない状態でもシューズのフリクションを信頼して登ることが出来る。アクアステルスソールにしてよかったと感じる場面である。
   
大滝上部。

 正面のこんもりした尾根の末端で二俣となる。

 西横沢は右俣で、水量は明らかに西横沢が多いが、ここも初めてだと判断に迷いそうなポイントである。

 ここも時間をかけてルートを検討し、西横沢が右俣であることを確認して進んだ。 

二俣を西横沢に入った直後。地形図Aの位置

 小滝が連続する。西横沢はとにかく小滝が多く、遡行図で「ナメ」とされている所でも他の渓のようなスッキリとしたナメではなくナメとも小滝ともとれるような中途半端なナメが多い。
   
   
ひたすら小滝が続く。

 さすがにこの辺まで来ると滝登りも飽きてきて、滝が見えるたびにうんざりした気分になってくる。

 一つ一つの滝に高さはないが、見た目以上に状態は悪く、何も考えずにお気軽に登れる状態ではない。

 人気の沢らしく、滝の左右にある草付きには、気をつけてみれば踏み跡とわかるレベルのトレースは付いていたが、このトレースがくせ者で、草付きの終わりには「お約束」ように悪いトラバースが待っていた。
   
 標高が2200mを越えた頃から紅葉が見頃になってきた。今頃千畳敷カールは観光客で大賑わいだと思うが、こちらは我々3人のみ。紅葉の美しさも、あまり人が多いと気分がそがれてしまって色あせて見えるが、今日のような雲一つない快晴で、沢の水音を聞きながら静かな雰囲気の中で眺める紅葉はよりいっそう美しく見える。
   
地形図B

 この辺まで来ると「これでもか!」というくらい連続した小滝も一服し、紅葉を眺めながらノンビリ遡行出来るようになる。
   
地形図C奥の二俣

 この上にもまだ小滝があるが、滝らしい滝はここが最後だったように思う。

 滝の左側がチムニー状になっていて簡単に登れる。
 
地形図D 

   

地形図E

 ここらあたりが紅葉の見頃。ダケカンバの黄色にナナカマドの赤がアクセントとなり、雲一つない青空をバックに素晴らしい景色を見せてくれる。
   

地形図F

 このすぐ上が終了点。終了点は廃道となった登山道「長谷部新道」が西横沢を横切っている地点。
   
     
目印の「トラロープ」ここの標高は  →   プロトレックの標高は2480m  地図ロイドの地形図だと標高2520m
   
   
 西横沢から長谷部新道に入る。写真右側には長谷部新道の橋が見える。

 長谷部新道は廃道にふさわしく、西横沢のトラバース部分はほとんど崩れており、部分的にかろうじて道の形跡をとどめるだけとなっていた。

中央はやはり終了点の目印「写真の遭難碑」 
   事前の情報では、終了点から千畳敷まで、長谷部新道を歩いて約30分で、廃道とは言えそこそこ歩きやすく、藪漕ぎもないはずであった。

 しかし、登山道の状況はどこに出しても恥ずかしくないレベルの「廃道」であり、ルートはハッキリしているものの決して歩きやすい状態ではない。

 また普通考える藪漕ぎは確かになかったが、灌木やハイマツの枝が登山道にはみ出し、軽い藪漕ぎとかわらない状態だった。

 3人でぶつくさ言いながら歩いていたが、尾根を回り込み千畳敷に繋がる尾根が見えたところで「ぶつくさ」が歓声にかわった。

 
   
   
   
   
   
   
   
   
 結局、西横沢出合いから千畳敷カールまで約1時間かかったが、とにかく景色がよかったので時間も疲れも全く気にならなかった。

 長谷部新道は注意看板の通り、ルーファイの必要がない夏の登山道歩き専門の人には厳しい道だった。

 どういう理由でここに登山道が作られたのか分からないが、ちょっとルートの選定を誤っているような気がする。

 廃道となってしまったのも納得できる。
  
 
 
 千畳敷カールは予想通り大賑わい。個人の好みではあるが、あまりにも人が多く賑やかだとせっかくの紅葉も少し色あせてみる。宝剣岳へも大勢の登山者が登っているらしく、コルへと続く九十九折りの登山道は人の列となっていた。

 木曽駒ヶ岳はBJと幻舞には初めての山で、元気が残っていれば宝剣岳まで登ってみるつもりでいたが、千畳敷カールに出た時点でこの日は「お腹いっぱい」で宝剣岳はパス。冬の楽しみにとっておくことにした。

 千畳敷に長居してもすることがないので早々と下山することに。通常であればうんざりするほど長く、苦痛以外の何者でもない下りの歩きが待っているところであるが、西横沢はロープウェイで快適に下山できる。これも西横沢の大きな魅力の一つだ。

 ロープウェイに駅に向かうとなにやら拡声器でがなり立てている。聞いてみると整理券を受け取って案内されるのを待っていろとのこと。この時点でちょうど昼頃だったが、ロープウェイは1時間待ち。こりゃ大変ということで整理券をもらい、乗車まで日向と日陰を行ったり来たりしながら時間を潰す。

 ちなみに、我々が乗車できたのは13時半頃で、この時点で2時間待ちの整理券が配られていた。13時半というと、山頂を目指した登山者がこれから続々と下山してくるし、カール散策の観光客、特にバスツアーなどはまだこれからどんどん上ってくる時間だ。

 人ごとなのでノンビリ構えていたが、最終的には何時間待ちになったのだろうか?



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