剱岳八峰Dフェース 富山大ルート



2009年8月11日〜8月13日


参加メンバー:仙人,幻舞

行動計画

8月11日 立山〜(アルペンルート)〜室堂〜雷鳥坂〜剱沢キャンプ場(テント泊)
  12日 剱沢雪渓〜長治郎雪渓〜八峰Dフェース〜北方稜線〜剱岳〜別山尾根〜剱沢キャンプ場(テント泊)
  13日 剱沢キャンプ場〜雷鳥坂〜室堂〜(アルペンルート)〜立山



8月11日(快晴)

夏合宿は、去年(2008年)に引き続き剱岳。八峰Dフェース富山大ルートを選定したのは、

1,人気ルート大好き人間のミーハー幻舞が「剱岳点の記」に影響され、長治郎雪渓を登ってみたいと騒ぎ出した。
2,去年の北方稜線ルートロストが一年間頭の隅に引っかかり続けているので、この検証。
3,適度に手応えがあって楽しめそう。(Cフェースだとちょっと物足りないかな?)

なんてとこが理由。




さて、普通群馬から剣岳に行くには、扇沢からアルペンルートが一般的だが、今回はちょっと遠回りして立山側から室堂へ向かうことにした。

 長距離になるので前日移動ということになったが、平日で高速1000円が適用されないため、一般道を走って立山まで向かうことに。一度1000円を経験してしまうと、普通料金で高速を走るのが凄く損をしている気がしてしまう。

 松本からR158を走り、平湯からR471で神岡へ。神岡からR41を富山方面へ向かい、立山までの予定。

 10日午後に出発し、途中稲核の蕎麦屋で「ざるそば」など味わいつつ、おっさん2人の色気の全くないドライブは続く。ちなみに、このざるそばはお勧めの一品。
 
 
 ちょっと寄り道して廃墟マニアには有名な「神岡鉱山」を横目で見学。といっても、道路から見えるのは現在でも操業中の工場のみなので、廃墟マニアのサイトにある写真のような光景は見られない。

 途中、道を間違えるトラブルはあったものの、無事立山の駐車場に到着。夕食代わりにコンビニ弁当を食べ、ケーブルカーの始発まで車中泊。

 朝、本日の予定は剱沢までなので特に慌てる必要もないが、車中泊では熟睡もできず、明るくなるのと同時に目が覚めてしまった。狭い車の中でボケッとしていてもしょうがないので、朝一番のケーブルカーで出発することにする。

 高原バスに乗ったところで、幻舞が何かを思い出して真っ青になった。「テントのポールを忘れたかも」なんですとーーーー。慌てふためく幻舞をよそに、仙人は「まあ何とかなるよ」と涼しい顔。

 バスに乗っている間中、幻舞は「入れたはず」「いや、やっぱり入れてない」と頭の中はテントポールを入れた入れないがぐるぐる回り。室堂に着き、バスを降りてザックを受け取るが早いか、すぐに脇によってザックをゴソゴソ。よかったーーー、ちゃんと入ってました。
 
 
   一安心したところで定番の「玉殿の湧水」で水筒を満たして行動開始。といっても、今日は地獄谷経由雷鳥坂から剱沢キャンプ場までなので、トレッキングというよりものんびり観光しながらという感じ。

 かなりノンビリ歩いたつもりが10時半頃にはテントの設営も完了し、特に後はやることもなく、時間つぶしに花の写真を撮りに行くついでに剣沢小屋に立ち寄り、ビールで到着祝い。

 
 
   花の写真を撮っていると、別山尾根から戻ってくる登山者でヘルメットを持った人たちが目に付いた。一般ルートにヘルメットは必要ないので、たぶん長治郎雪渓か見当をつけて聞いてみると予想通り。

 様子を聞くと、6峰の特にCフェースはクライマーが大勢取り付いていらしい。
 
 明日も天気はよさそうだし、やっぱり人は多いかも?
 
 

8月12日(晴れ)


 2:50に行動開始。剣沢雪渓に出た時点で早めにアイゼンを装着。約1時間で長治郎雪渓出合い。長治郎雪渓を登り始めた頃からやっと薄明るくなってきた。今のところ、他パーティの姿はない。

 長治郎雪渓初見参の幻舞は、源治郎尾根,八峰を見上げながらその景色に興奮している。



 長治郎雪渓は、映画「剱岳点の記」の影響で今年は登山者が多いらしい。確かに、白馬大雪渓のように、ハイキングレベルで登れるとうほど簡単でないが、雪稜登攀のように特別なアイゼンワークやピッケル技術が必要というほどでもない。でも雰囲気は登山というよりも「登攀」という感じがするし、一般ルートではないという満足感もある。

 明るくなると同時に、真砂沢かららしいパーティの姿が見え始めた。噂通り、登山者は多いようだ。

 普通考えれば、ほとんどは長治郎雪渓が目的で、クライマーも、大半はCフェース狙いだとわかるが、なぜか、登ってくるすべてのパーティがDフェースを目指しているように感じて、何となく気持ちが焦ってくる。

 熊岩のすぐ横が6峰になる。

 
 
熊岩

6峰 
   
Cフェース取り付き Dフェース富山大ルート1ピッチ目を登攀するベルニナパーティ
 

 幻舞へ6峰のルートを教えるため、Cフェースの取り付きに寄り道。初級者向きの人気ルートとのことだが、確かに、傾斜の緩いスラブで、これならリードデビューにはもってこいとう感じ。逆に、腕に覚えのあるクライマーには物足りないだろう。 

 Dフェースへ移動していくと、上から降りてくる2パーティを発見。うち1パーティは我々と同じDフェース狙いらしい。このパーティに若干遅れてDフェース富山大ルートの取り付きに到着。先行パーティは、名門「ベルニナ山岳会」パーティだった。

 とりあえず、この時点で見える範囲には他にこのルートに向かっていそうなパーティはなく、先行は経験豊富そうなリーダーに率いられた名門山岳会のパーティで、待たされてイライラすることもなさそうだし、後続パーティがいないので、後ろからつつかれて慌てることもない。天気もいいし、気持ちよくクライミングが楽しめそうだ。
 取り付きにて準備中




            2ピッチ目? 
 
   
4ピッチ目??  5ピッチ目???    6ピッチ目????
 
 ピッチ数がすべて「?」なのはHP作成担当の幻舞が夢中で登攀しているため。むちゃくちゃ苦戦したとか、厳しかったなんてことでもあれば覚えているが、もう楽しくてワクワクしながら登っているので、後から写真を見ても何ピッチ目だったかなんて全く覚えていない。

 裏を返せば、幻舞程度のクライマーでも楽しく登攀できるレベルのルートだということ。


 このルート、幻舞は初見参だし、仙人も前回登ったのはかなり前ということで、ルートはベルニナ山岳会にお任せして後を追うことにした。

 幻舞先行でクライミング開始。ルートはここでゴチャゴチャ書くよりも、ガイドブックを見たほうが正確で遙かにわかりやすいので詳細は書かないが、とにかくあちこちに残置ハーケンがあり、どこをどう登っても登れるように見える。

 先行のベルニナパーティも、ピッチの区切りやルート取りがトポとは微妙に異なっているようだ。仙人リードのワンピッチのみ、ベルニナパーティとは別ルートを取ったが、後は彼らのルートをトレースさせてもらった。

 富山大ルートは、取り付きまでの雰囲気も楽しめるし、ルートも適度に緊張感があって快適なルートだ。なによりも剱岳の雄大な景色を眺めながらのクライミングはとても気分がいい。人気ルートなのもうなずける。

   
   

 終了点からは、Cフェースを登攀しているパーティや、八峰を縦走しているパーティなども見える。そして何よりも剱岳の展望が素晴らしい。

 このルート、幻舞の持っているガイドブックによると、ピッチグレードは奇数ピッチにW+〜X−級があるが、体感的にはW級くらいで快適なルートだった。

 終了点からの展望を満喫し、八峰上半部から北方稜線〜剱岳〜別山尾根で剱沢へ向かう。 

   
Cフェースを登攀するパーティ   チンネ左稜線

 八峰[峰から懸垂下降2回で長治郎谷右俣のコルに降り立つと、この頃からガスがかかって見通しが悪くなってきた。まあこの時期のお約束みたいなものなので、これはしょうがないと言えばしょうがないが、できれば視界のいい状態で北方稜線を歩きたかった。

 というのは、今回の北方稜線縦走は、去年チンネ左稜線登攀の帰路、北方稜線でルートを見失った検証が主な目的であるため。

 去年は、濃いガスにまかれ、2時間近くルートを探したが、結局正しいルートを発見できず、諦めて長治郎谷を下ろうということになり、長治郎谷に向かったつもりが、いつの間にやら正しいルートを歩いていたという、結果オーライではあるが、どこでどう間違え、どこから正しいルートに戻ったのか、いくら考えても確信の持てる答えが出ず、一年間スッキリしない状態が続いていた。
     
池谷ガリーを見下ろしつつ  ペイントマークのあるガリーを登る。  ガリーの途中
 
ハイマツ帯の明瞭な踏み跡をたどり、正面の小ピークを越えると 立派なテントサイトがある。ここまでは前回に同じ。 前回見落としたのが正面の岩峰。この岩峰をトラバースするが、前回はガスでトラバースルートを見落としていた。
     
正解のトラバースルート。   前回無理矢理登ったガリー
北方稜線をゆく。 
     
   長治郎雪渓左俣のコル
 剱岳山頂

 池谷ガリーのコルからペイントマークの付いたガリーを登る。ここは間違えようがない。ガリーを登り切ると、ハイマツ帯の真ん中に明瞭な踏み跡があり、この踏み跡をたどって正面の小ピークを越えると、かなりきちんと整地された「テン場」と言っても差し支えなさそうなビバークサイトがある。ここまでも前回に同じ。

 前回は、このビバークサイトでルートを見失った。ここからもかなり明瞭な、ケルンなどもある踏み跡が続いていたが、踏み跡をたどると岩壁に突きあたってしまう。

 正解は、写真で示したように、この岩壁のバンドを左にトラバースだ。

 前回のルートロストの原因は、はあまりに濃いガスのため、このトラバースルートが発見できなかったということと、ガスで方向感覚がおかしくなり、ビバークサイトから岩壁までの先の踏み跡が、まるでUターンしているように感じてしまったこと。

 感覚的には、尾根を歩き、尾根の末端で4mくらい下に降りて、そこから180°Uターンして、歩いてきた尾根の中腹をまた戻っているように思えてしまった。

 前回は、岩壁に突きあたったところで、もとの尾根に戻ろうとして、岩壁の右側にあったガリーを強引に登ったため、結果的に正しいルートに戻れたらしい。

 今回は、ちょうどこのルートに精通しているらしい単独の登山者がいたのと、岩壁トラバースルートの途中にあったお助けヒモが見えたのとで正しいルートが判明し、一年越しの宿題が片づいてやっとスッキリ。

 この先も、部分的にわかりにくいところがあったが、いずれにしても天気さえ良ければ問題なさそう。


 剱沢キャンプ場に戻ったのは16時頃。この日は夕方から雨が落ちてきたため、夕食はテントの中。その後も天候は回復せず、降ったりやんだりの繰り返しになった。

 夜、一時的に雨がやんだ隙を狙って、幻舞がトイレに起きる。外は濃いガスで、ヘッデンの明かりくらいでは足元しか見えない状態だが、水場の水音を頼りに進み、水場からはトイレまで引かれたホースをたどって何とかトイレに到達。用を済ませ、またホースをたどって水場までは戻れたが、問題はここからテントまで。

 水場から方向を確認し、テントに向かって歩いたつもりが、全く別の場所に行ってしまう。また水の音を頼り水場に戻ってやり直しするが、再び失敗。

 20分経過・・・・未だテントにたどり着けず。まさか午前2時に大声を出して仙人を呼ぶわけにも行かないし、本気でトイレに戻って明るくなるのをまとうと考えたが、最後にもう一度だけトライすることにした。

 方向を確認し、慎重に進む。と、何となく見覚えのあるテントが。「これはもしかして」と更に進むと、たくさんのストックが束ねられているのが目印のお隣さんのテントを発見し、やっと自分のテントに戻ってこられた。

 いやーーー、本気でキャンプ場で遭難するかと思ってしまった。



8月13日(雨)
 

 朝から雨。小降りになったところを見計らってテントの撤収&出発。テント泊は安上がりだし、山小屋のように布団一枚に大人2人なんてこともなく、自分だけの空間が確保できるが、悪天候下での設営と撤収は難儀する。

 最後にテントをたたんで、ザックに入れるためにはどうしても雨の中でザックの蓋を開けなければならない。モタモタしていたら、ザックの中はびっしょりになってしまう。

 この日は、幸いにテントを撤収する間だけ雨がやんでくれた。テントをザックに収納し、歩き始めたとたんに強い雨と風。室堂についてカッパを脱ぐと、汗だか雨だかでしけっぽくて気持ち悪い。

 当然のごとく、帰りは温泉でまったり。温泉で疲れを癒し、さっぱりして帰路についた。
 
 



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