八ヶ岳 小同心クラック

2014年6月15日

参加メンバー:仙人、BJ、幻舞 


ちょうど見頃を迎えたツクモ草を見るため、小同心クラックを登ることになった。

 
 

ツクモ草

キンポウゲ 科オキナグサ族の多年草 学名:Pulsatilla nipponica

日本の固有種で、本州では白馬岳、雪倉岳、八ヶ岳にしか見られない貴重な高山植物。

見頃が梅雨時期と言うこともあり、休日と天候のタイミングが合わないとなかなか見るチャンスがない。

八ヶ岳では登山道脇でも見ることができるが、小同心クラックのルート上はツクモ草が多いことで知られている。
   
 
 八ヶ岳へ向かう車が白樺湖近くにさしかかると、道路脇に数頭の鹿を目撃した。このあたりで鹿を目にするのは珍しいことではなく、むしろ一頭も見ないと言うことの方が珍しいくらい鹿が多い。

 塩分を取るため冬道路に撒かれる凍結防止剤を舐めにくるなんて話しをしていたら、一頭の雌鹿がいきなり道路に飛び出し、もう少しでひき殺すところだった。

 とんだアクシデントもあったが、予定通り5時前に美濃戸口着。本日はBJのジムニーなのでこのまま美濃戸へ向かうが、この時間でも美濃戸口の駐車場は8割方埋まっていた。悪路で知られた美濃戸林道を警戒し、美濃戸口に車を置いていく登山者が多いのかと思ったが、林道は整備されており、普通車でもそう無理なく走行できる状態で、美濃戸の駐車場は9割方埋まっていた。

 梅雨時期に土日連続の好天とあっては考えることは皆同じで登山者は非常に多いようだ。

 5時頃に行動開始するが、とにかく寒い!BJはさっさとウィンドブレーカーを着込んでいる。仙人と幻舞は少し歩けば暖まると思って我慢するが、20分歩いてようやく少し寒さが和らいだ程度。この寒さは予想外だった。

 我々は八ヶ岳に登る時はアイスクライミングをからめてというパターンがほとんどであるため、3人とも雪のない八ヶ岳はかなり久しぶり。何度も歩いているはずに北沢が全く違った景色に見え、どの辺を歩いているのか見当がつかなくなる。
 
 
 毎度のことながら北沢の歩きは長く感じる。アプローチにもならないようなレベルの歩きだけに、余計長く感じてしまうようだ。

 しかも雪のない北沢登山道の歩きにくいこと!

 冬は登山道が雪で舗装され,路面の凹凸がなくなって歩きやすいが、無雪期の今は登山道が石で不規則な階段状になっていて非常に歩きにくい。

 1時間ちょっとで赤岳鉱泉に到着。木のテーブルが嫌に白いと思ったら一面霜に覆われていた。ここまで気温が下がるといったん暑さに慣れた体にはけっこうきつい。
 
 赤岳鉱泉で一休みして小同心に向かう。

 赤岳鉱泉から硫黄岳への登山道に入り、すぐに登山道を外れて大同心沢へ入る。一番最初に登山道を横切っている沢が大同心沢で、もちろん一般登山道はないが、登山道レベルの踏み跡がある。

 とてもバリエーションルートへのアプローチとは思えないほどハッキリした踏み跡に一般登山者が迷い込まないようにするためか、沢の入り口はロープで塞がれ、ご丁寧に立派な道標まで設置されている。

 大同心沢に入ってすぐに踏み跡は左側の尾根に続いていおり、踏み跡を辿って尾根に入るといきなりの急登が始まった。
   あいかわらず登山道レベル(ほとんど登山道)の踏み跡があり、バリエーションルートへのアプローチとしては非常に歩きやすくて助かるが、この急登は結構きつい。この急登は大同心基部まで角度を緩めることなく続いていた。

 尾根道はかなり整備されてる様子で、道をふさいだ倒木にはノコギリで切断した跡があり、一般登山者でも普通に歩ける状態になっていた。

 赤岳鉱泉では一般登山者対象のネイチャーガイドツアーなども実施しているようなので、ツアーコースとして整備しているのかもしれない。
   
 駐車場から約2時間半で大同心基部に到着した。見ると雲稜ルートに1パーティ取り付いている。

 小同心へもガイドパーティと思われる5人が向かっており、このまま進んでも取り付きで順番待ちになることは確実なので、ここで一休みしつつ、クライミング装備の準備をする。

 
   気になっていたのが大同心基部から小同心へのトラバースルートの途中にある雪渓の状態。

 前回(といっても数年前だが)は予想外に雪渓が大きく、かなり怖い思いをして通過した記憶があり、2月に記録的な大雪が降った今年は前回以上に雪渓が大きく残っている可能性があったが、予想以上に雪渓は小さくて一安心。

 確実を期すため、先行しているガイドパーティの様子を横目で見つつルートを確認したが、実際に行ってみたらかなりハッキリした踏み跡があり、何も考えずに踏み跡を辿ったら全く問題なく雪渓はパスできてしまった。
   
 上の記述と前後してしまうが、大同心基部から小同心へはいったん大同心沢を50mほど下降する。

 写真は大同心沢を下降する仙人とドクター。

 百戦錬磨の仙人は当然であるが、ドクター、幻舞も冬に大同心沢は登っているため、この景色を見るのははじめてではないはずだが、やはり雪があるのとないのと全く違う場所に見えてしまう。
   
 この写真が3月下旬の同じ場所。
 
 
 小同心クラック取り付きに到着。写真を撮り忘れたが、取り付きは広いテラスになっているので景色を見ながらノンビリできる。ここでやっと日が当たってきたので日向ぼっこをしながらロープとクライミングシューズの準備 

 先行のガイドパーティであるが、ガイドは仙人の昔からの知り合いの広瀬ガイドだった。いつものことながら仙人の顔の広さには驚かされる。

 先行パーティのラストが1ピッチ目終了点から動き始めたのを確認して我々も登攀開始。トップは幻舞でビレイヤーはBJ、仙人は写真班となる。

 小同心クラックのピッチグレードは1,2ピッチがW−〜W級で頂上直下の岩場がV級ということになっているらしい。登ってみるとホールドはオールガバで「岩が剥がれなければ」超簡単であるが、とにかく岩が脆く、うっかり確認せずに体重をかけたら岩が剥がれて真っ逆さまなんてことになりかねない。

 
1ピッチ目

 ビレイヤーの位置から左上するように登っていく。途中残置ハーケン類が見当たらず、ロープを引きずりながら「フリーソロ」している状態になる。登攀そのものは簡単なのでこちらは特に問題ないが、問題はロープの流れが極端に悪いことだ。

 小同心クラックは岩が突起状になっており(この突起がガバホールドになるため簡単に登れる)登るにつれてロープが突起を巻くような形になると岩との摩擦でロープが流れなくなってしまう。しかたなく上と下でロープをパタパタやって引っかかった岩角からロープを外すが、またすぐに引っかかってしまってきりがない。

 登り始めてから約15mの所にペツルのハンガーボルトで作られた終了点があり、ここで最初のランニングを取るが、これがかえって徒となり、それでなくとも悪いロープの流れが更に悪くなってしまった。ここでピッチを区切ることも考えたが、3人集まるにはちょっと狭すぎるので、先行のガイドパーティにならって強引にロープを引きずりながら1段目のテラスまでピッチを延ばす。

 ロープが引っかかって1段目テラスの終了点まであと1mが届かない!ハーネスがずり落ちるかと思うほどロープを引っ張ってようやく終了点に到着。
   
 1ピッチ目取り付き  1ピッチ目をリードする幻舞
   
 
 2ピッチ目

 スタートからすぐに右のチムニー状に入る。1ピッチ目ほどではないが、あいかわらずランニングを取れるような支点がない。というのは幻舞の単なる見落としで、よく見ればかなりしっかりした支点が作られている。

 あいかわらずなのがロープの流れ。まじめな話し、これだったらロープなんか使わずにフリーソロで登った方が安全に登れるような気がする。 
  2ピッチ目をリードする幻舞

 途中1カ所わずかにハングしたところがあるが、ここもガバなので気持ちよく登れる。

 最後のほうでそのまま直上すべき所を右側にトラバースしてチムニー状を登ったら、本来の終了点である小同心の頭よりも一段下のテラスに出てしまった。(小同心の肩というらしい)

 そういえば前回(数年前)もこの肩に出てしまい、その時はルートが間違っているとは思わずに草付きの斜面を数m登って小同心の頭に出た記憶がある。

 今回もこのまま草付きをとも考えたが、セルフビレイを取れるような場所もなく、草付きも案外悪そうに見えたのでトラバース点までクライムダウンし、正しいルートを登り直すことにした。

 簡単とは言っても本チャンルートでクライムダウンなんて滅多にないことなのでそれなりに緊張して降りる。

 約4mほど降りて左にトラバース、正しいルートを登って2ピッチ目の終了点である小同心の頭に無事到着。このルートミスで20分くらいのタイムロス。

 
   
  3ピッチ目

 様子がわからなかったのでロープを付けているが、ここから横岳山頂までロープは必要ない。

 この岩場を登ったところが「小同心の頭」だと思うが、幻舞が調べた範囲では2ピッチ目の終了点が小同心の頭とされていたのでそのように記載した。
 
 小同心の頭から横岳山頂を見る。

 ここから横岳山頂直下の岩場までは普通の登山道レベル。直下の岩場もルートを選べばV級ないくらい。

 今回はBJがアプローチシューズだったので一応幻舞がロープを引きずって登ったが、結局必要なしということですぐに回収。

 山頂では偶然にもブログ友達のぴぃさんと遭遇した。ぴぃさんとは過去に山行をともにしたことがあるが、また何処か一緒に登りましょうと約束して分かれた。

 この日、横岳山頂は大勢の登山者で賑わっていたが、変なところから登ってきた我々に興味を持つ人もいて話しかけてくる。ロッククライミングで登ってきたことを説明するとかなり驚いた様子だ。

 クライミングの経験がない人はルートの難易度には関係なく、クライミング=危険と思い込んでしまうようだ。まあ確かに横岳の鉄梯子や鎖場でキャーキャー言っている人にとってはクライミングなんてとんでもない危険な行為かもしれないが・・・・・
 
 
 相談の結果、下山は硫黄岳経由に決定。数年前まで他の登山者に追い抜かれるなんてまずなかった我々だが、寄る年波には勝てず、後続の登山者に抜かれまくってヨタヨタと下山した。

3人とも久しぶりの本チャンルートだったが、天候に恵まれ、お目当てのツクモ草もみられた楽しい1日だった。



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