裏妙義 木戸壁右カンテルート

2014.10.25
参加メンバー:仙人、幻舞
 
木戸壁 右カンテルート

初登 :1979年1月14日(初登者不明)
再整備:2010年 山楽童人 グループノマジ

 左のトポはネットで探したものであるが、岳人2011年3月号に記載されていたものらしい。


 トポでは4ピッチ目30m、5ピッチ目15mとなっているが、4ピッチ目20mで終了点があり、今回は4ピッチ目20m、5ピッチ目25mで登った。

 下降は同ルートを懸垂で降りるが、妙義特有の岩質でロープが引っかかりやすいため、このルートでは細かく区切って下降するのが一般的なようである。

 トポの○印が懸垂下降支点で、下降はトポに従うと6回に分けて降りることになる。
 
 裏妙義の登山道である篭沢ルート沿いの岩壁にマルチピッチのルートがあるらしいという情報を2012年頃に仙人が見つけ、話を聞いた幻舞も、まだ1人で山歩きを楽しんでいた頃、丁須の頭から篭沢ルートで下山中に(当時の感覚では)とんでもない岩壁に赤いロープがぶら下がっているのを見て「こんな岩壁を登る人がいるなんて信じられない」と思ったことを思い出した。 

 裏妙義なら地元だし、短時間に行けて便利とは思ったが、妙義山特有の岩質を考えると躊躇せざるを得ず、いままで足が向かなかった


 さて、その「妙義特有の岩質」であるが、妙義山は火砕岩・溶岩から成る山で、表面が目の粗いやすりのようにザラザラしており、その表面から平均握り拳大の岩がにょきにょき生えているという感じである。この握り拳大の岩もまた表面がザラザラしている。

 今回撮影した中で、下の写真が妙義の岩質が1番よくわかる写真である。

 

 とにかく表面がザラザラしているのでフリクションはバツグンに効くし、写真でおわかりのごとく、ホールドは突起状に生えている感じで、基本全て「ガバ」である。ガバであるが、悲しいことに岩が脆く、不用意に体重をかけると洒落にならない確率で突起状のホールドがポロッと取れてしまうことがある。これで岩がしっかりしていれば、妙義山はクライミングのメッカになっていたかもしれない。

 脆い岩質のためか、支点はかなりしっかりしたハンガーボルトが2〜3m間隔で設置されており、リードしていても安心感があるが、全ての支点にクイックドローでランニングを取っていくと、カラビナの屈折抵抗にざらざらの岩質による抵抗が加わり、ロープの流れが極端に悪くなってしまうため、60cmスリングでクイックドローを延ばし、ロープが直線になるようにかなり気を遣った。

 よって、このルートをリードするときはクイックドロー最低10セット、60cmスリング6本は必須である。反対に、カムやナッツ類、ハンマーの出番は全くない。

 今回、ロープは10.2mm50mを使用したが、やはりダブルロープが正解であったと思う。登ることだけを考えればシングルロープで全く問題はないが、ロープ1本だと懸垂下降時に重大な問題が発生する可能性がある。

 このルートは、何度も書いているように岩がザラザラしていて突起状になっているため、懸垂下降後のロープ回収時にロープが引っかかりやすい。ダブルロープで通常行うように、2本のロープを結んでいっぺんに長い距離を降りようとすると、ほぼ確実に結び目が引っかかって回収できなくなる。

 このため、懸垂は1本のロープで細かく区切って下降するのが一般的だが、1本ロープでも引っかかることがある。実際、我々も下降時にロープが2回引っかかり、四苦八苦して回収するという場面もあった。

 無事回収できたからいいようなものの、シングルロープの場合どうしても回収できなければ登ることも降りることもできなくなってしまう。

 これがダブルロープなら、緊急避難的にもう1本のロープで登り返し、引っかかったロープを回収することも可能である。
   
   
 木戸壁へは、国民宿舎から裏妙義「丁須の頭」への一般登山道「篭沢ルート」を進む。

 約30分ほどで右手に写真の岩小屋が見えてくる。実際の取り付きは仙人の約50mほど先になる。

 この日、4人パーティが先行していた。
   

1ピッチ目。

 この日は岩が湿っていてヌルヌルの状態だった。日当たりが悪いので乾いているときの方が少ないと思われる。

 トポではV級であるが、湿気った状態だとW級に化ける。 
   

2ピッチ目

 右側のカンテを直上する。先行パーティがいる位置が終了点。

 足場が悪く、ハンギングビレーとなる。

 全ピッチともベタ打ちされたハンガーボルトを追っていけばルーファイはほぼ必要ない。 
   
 
 3ピッチ目

 松の木が終了点。 ここは灌木に支点を取れるので、前のパーティと詰まってしまっても3人くらいなら何とかなる。
   
   
ピッチ目

 終了点より3m下から見下ろして写したもの。

 ここも終了点が狭く、どんなに詰めても2人がやっと。


 この時も先行パーティのセカンドがいたため、足場の安定したこの位置で終了点が空くのを待っていた。
 
 今回は、仙人が手のひらサイズのトランシーバーを用意した。使ってみると非常に便利で、先行パーティが上と下で怒鳴り合いをしているのを尻目に、我々はトランシーバーで快適に意思疎通が出来た。

 4ピッチ目の終了点空き待ちでも、通常だと怒鳴り合いになるため詳細な状況は伝えにくく 、状況がハッキリとわからないビレイヤーはイライラしながら「忍」の一字で待つのみであるが、今回はトランシーバーで細かい情報を伝え、「セルフ取ったからビレイ解除してノンビリ待ってて」「了解」「そろそろ行けそうだからビレイお願い」「いつでもいいよーーー」なんて余裕のやりとりができた。

 仙人も幻舞も、たすき掛けにした60cmナイロンスリングにスリングをタイオフしているが、トランシーバーもたすき掛けにしたナイロンスリングに引っかけておいた。トランシーバーが小型なのでこの状態でも全く邪魔にならないし、仮に落としてしまってもヤフオクで1台1000円なのであきらめもつく。
 

5ピッチ目

 右側の草付きがトポにある4ピッチ目の終了点だと思われる。 

 写真の位置からだと5ピッチ目は約27mとなる。

 下降時は草付きで区切る。
   
   

  ルートの終了点。ギリギリ6人が収まる。

 仙人が付けているのが今回活躍した小型トランシーバー
 


 今回は先行パーティがいたため待ち時間が長くなって、登攀3時間、下降2時間と予想外に時間がかかってしまったが、普通に登れれば登攀2時間、下降1時間というところだと思われる。

 ルートの感想としては、家から近くてグレードもお手頃ではあるが、やはりあまりにも岩質が悪くて登るにしても降りるにしても運不運の確率が大きく、積極的に行きたいルートではないというのが共通した意見であった。



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