2010年度夏合宿 北岳バットレス 第4尾根〜Dガリー奥壁 |
参加メンバー : 仙人,BJ,幻舞 日程 7月24日 広河原〜大樺沢〜二俣〜白根御池小屋(泊) 7月25日 白根御池小屋〜bガリー大滝〜4尾根〜 Dガリー奥壁〜山頂〜肩の小屋〜草すべり〜 二俣〜大樺沢〜広河原 |
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装備 個人分 クイックドロー:5セット バラビナ:5コ ロックビナ:3コ ビレイ器 スリング:120cm×3 60cm×5 共同装備 ロープ :8.5mm/50m×2本 カム:キャメロット#1〜3各1 フレンズ 3 |
7月24日(土)快晴 前夜移動し、おかげでバス乗り場すぐ横の駐車場に止められた。芦安の駐車場は、バス乗り場に近いところから埋まっていき、一番遠い駐車場に止める羽目になると、かなり歩かなければならない。 我々が駐車場に着いて1時間もしないうちに駐車場は満車となった。奈良田側は、大雨で道が崩れ、身延から奈良田への通行ができなくなっているそうで、奈良田側から入山することができないため、余計に混んでいるようだ。 車中泊で仮眠していると、4時過ぎにはざわざわしはじめ、4時半少し前には登山者がバスに、タクシーにと続々と乗り込んでいる。 そんな慌ただしくしている登山者を尻目に、我々はノンビリ朝食タイム。本日は白根御池小屋までので、慌てる必要はなく、ゆっくりと準備して出発すればいい。 夏合宿の最初の計画段階では、土曜日のうちに下部フランケ〜Dガリー奥壁と登って、肩の小屋で1泊、日曜日にゆっくり景色を眺めながら下山というものだったが、土,日とも午後から雷注意報が出てしまい、予定通りだと登攀中に雷に遭う可能性が高くなったため、日曜日に早い時間から登り始め、午前中に山頂に抜けることにして、合わせて時間がかかりそうな下部フランケから様子がわかっている4尾根に変更した。 |
広河原で湧き水を補給し、大樺沢をノンビリと歩く。遠回りにはなるが、樹林帯で見通しのきかない登山道を延々と歩くより、沢音を聞き、バットレスを正面に見ながら歩く方が遙かに気分がいい。 涼しげな沢の流れを写真に撮り、景色を楽しみながらゆっくりと歩く。 |
順調に歩いていたのもつかの間、すぐに登山道の渋滞が始まった。ツアー登山とおぼしきグループが数グループ前にいるようだが、先頭グループの超スローペースに、後続のグループもペースを合わせているため、特に声を掛け合って後続に道を譲ることもしないし、我々の位置から声を出しても、とても先頭までは届かないだろう。 こうなると我々最後尾は我慢して付いていくしかない。我慢して付いていくうちに、途中のグルーブが順次休憩を取り始めたため、自然と先頭グループが近づいてきて、樹林帯を抜けたあたりでようやく声が届く距離まで間を詰められた。と思ったら後ろから 「先頭の方、道を譲ってくれませんか!」 と、怒気を含んだ大声が聞こえ、ようやく先頭グループが道を譲ってくれた。追い越しざまに、もっと後方に注意を払い、早い人が追いついてきたら道を譲るように注意したが、おざなりに返事をしただけで、そんな気は毛頭ないようだった。 |
二俣に到着。トイレ周辺は人も多いし、若干臭いも気になるので少し離れたところで大休止をとる。 幻舞は朝寝を決めこみ、仙人とBJは近くの岩でボルダリング。とにかく時間が有り余っているので、ここで小一時間時間をつぶす。 仙人が無警戒に雪渓の下に入り込むハイカーを発見。この時期の雪渓はいつ崩れてもおかしくない状態だし、仮に崩れて下敷きになったら、雪が堅くて道具がなくては掘り出せるものではない。 余計な一言かとも思ったが、注意するとすぐに外に出てくれた。 |
二俣でしばしまったりと過ごし、今宵の宿である白根御池小屋へ向かう。いかんせん早く着きすぎだが、他にすることもないので、宿泊手続きだけ済ませ、到着祝いにビールで乾杯。アルコールに弱い幻舞はベンチでお昼寝。仙人とBJは本格的に飲み始めた。 白根御池小屋は、本日は満員盛況で布団1枚に2人で寝て欲しいとのこと。内心ガッカリしたが、いざ部屋に行ってみると、布団はかなり大きめで、2人で寝ても十分ゆったり寝られる。 建物も新しいせいで綺麗だし、食事も合格点、明日の登攀に備え、本日は18時に就寝。 7月25日(日)快晴 午前1時30分起床。午前中に山頂に抜けるため、ヘッデンで取り付きまで行き、明るくなるのを待って登攀開始の予定だ。二俣の仮設トイレ近くに不要品をデポし、背中を軽くする。 二俣から先、登山道も雪渓を横切るところがあり、ヘッデンの明かりとアプローチシューズで緊張する。この時点までは、まだ下部フランケを諦めていなかったが、この状況を見て断念。どうしても本日中には帰宅しなければならない事情もあるため、下部フランケはまた次の機会とする。 bガリー大滝へのアプローチは、登山道からの分岐さえ見逃さなければ、踏み跡もしっかり付いているのでヘッデンでも問題なく歩くことができる。 先行するパーティもなく、鼻歌気分で歩いていると、ヘッデンの明かりになにやら白いものが浮かび上がってきた。なんだか嫌な予感が・・・・・ 予感的中!(なぜか悪い予感はよく当たる)bガリー大滝取り付きまで、あと60mというところで踏み跡は雪渓に飲み込まれていた。 仙人,BJは軽アイゼンを持っているが、とても軽アイゼンで登れる雪渓ではない。ロープで確保しようにも、適当な支点すらない状態では、無理して登って滑ったら即アウト。 |
3人で相談するも、打開策はなく「取り付き敗退」も覚悟した。 ← bガリー大滝下を埋めた雪渓 諦めかけたその時、後続の4人パーティが登ってきた。挨拶を交わし、我々が状況を説明してかまわず先行してくれるように言うと 「皆さんはどうされます?」 「いやーーー、どうしようもないので途方に暮れてます」 「アイゼンとピッケルを持っていますから、よかったら ロープをフィックスしましょうか?」 もう考えるまでもなく、「ぜひお願いします!」 |
後続は山岳ガイド「風の谷」パーティで、声をかけてくれたのは代表の山田哲哉ガイドだった。 我々のロープを山田ガイドがフィックスして、風の谷パーティが先行、我々がその後に続くということになり、幻舞のビレイで山田ガイドが雪渓を登ってハーケン2本で支点を構築してロープをフィックス。 全員がアイゼンを装備している風の谷パーティは、ロープを手がかりにして登る。アイゼンのない幻舞は、プルージックでセルフを取って登るが、アプローチシューズでも意外なほど滑らない。 山田ガイドからハーケンの回収を頼まれたが、ハンマーのない我々はどうすることもできず、申し訳ないが山田ガイドにその旨伝えると、山田ガイドは気持ちよく了解してくれた。 しかし、あまりにも山田ガイドに申し訳ないので、BJと手頃な大きさの岩を探し、岩をハンマー代わりにして何とかハーケンの回収に成功した。 |
山田ガイドのおかげで無事bガリー大滝まで到達。風の谷パーティに続いて大滝を登るが、ここで心配になったのがCガリーの横断。Cガリーも同様に雪渓が残っていたら敗退の可能性もある。 ドキドキしながらCガリーを見ると、やっぱり雪渓が残っており、いつもの取り付きは、かなり雪渓を登らないと到達できなくなっていた。 風の谷パーティは?と見ていると、雪渓の末端を巻いて、灌木帯を登って行く。我々も風の谷パーティの後を追い、灌木帯に突入。ピラミッドフェースの最終ピッチあたりに出た。風の谷パーティに続いてここを2ピッチ登って無事4尾根の取り付きに到着。 |
富士山もバッチリ見える絶好の登攀日より。山田ガイドはDガリー奥壁へ継攀する我々に気を遣って「かまわず先行してくださって結構ですよ」と言ってくれたが、山田ガイドがいなければそもそもここにいなかったわけで、さすがに先行させてもらうのは気がとがめる。 風の谷パーティと、我々より先に取り付きのテラスにいたパーティに続いて登攀しようとすると、先行パーティから「準備がまだなので先に行ってください」と順番を譲られ、ありがたく先行させていただく。 本来なら4尾根初見参のBJにリードしてもらうところだが、時間節約のため、3回目でピッチの区切りが分かっている幻舞リードで登攀開始。 |
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もともと簡単なルートで、1ピッチ目の出だしと、X級とされている3m以外は階段登り。 ロープ流れが悪くなるのを嫌ってランニングはワンピッチあたり1〜2カ所のみでさっさと登る。へたくそなくせに手を抜こうとする幻舞の悪い癖だ。 4尾根は、幻舞のオールリードでマッチ箱へ。ここから懸垂下降2回でDガリー奥壁の取り付きになる。 |
Dガリー奥壁の取り付きに到達し、ここで大休止しつつ、オーダーの相談。 バットレス初見参のBJリードが順当なところだが、フリー用のクライミングシューズをルートで長時間履いたため、足の痛みが酷くなり、幻舞リードでBJ,仙人の順となる。なお、BJと仙人は、時間差をつけて同時登攀とする。 1ピッチ目 Dガリー奥壁は、1ピッチ目がいきなり核心のハングとなるが、ガバホールドが多く、見た目ほど難しくはない。 ハング越えで1本取っておきたいところだが、残置ハーケンがない。前回は、要所要所に残置ハーケンがあったので、おかしいと思いつつもキャメロットの#1でランニングを取ると、そのすぐ横にしっかりした残置ハーケンがあった。 ハングを越えるとスラブをクラックに沿って登り、スラブを約20m登ったところでピッチを区切る。 |
核心のハング | 1ピッチ目終了点より見下ろす。 | 2ピッチ目を見上げる。 |
2ピッチ目 |