2010年度春合宿 前穂高岳北尾根


  「山遊人の会 Moss Back」の記念すべき第1回山行として選んだのが、残雪の前穂高岳北尾根。

 前穂高岳北尾根は、以前から幻舞が「一度登攀してみたい」と騒いでいたルートだったが、無雪期の登攀は面白味に欠けるということで後回しになっていた。
 
 そんなおり、2010年のGWに春合宿として第1回山行を実施することとなり、メンバーの都合で日程は連休終盤の4日,5日の2日間となったため、雪という要素が加わってそこそこ手応えもあり、日程的にも1泊2日でちょうど良い残雪の前穂高岳北尾根登攀となった。

 合わせて、下山時のお楽しみとして、仙人,BJの2名は前穂高沢のスキー滑降も楽しむことになった。また、いつもはテン泊山行だが、今回はちょっと贅沢をして涸沢ヒュッテ泊まりとした。


行動計画

5月4日:上高地〜横尾〜涸沢 涸沢ヒュッテ泊  到着後、ヒュッテ周辺の斜面でスキーの足馴らし

5月5日:涸沢ヒュッテ〜5,6のコル〜北尾根〜前穂山頂〜前穂高沢〜上高地


参加メンバー: 仙人,BJ,幻舞

個人装備 :アイゼン,ピッケル(シングル),ハーネス,ヘルメット,ビレイ器

共同装備 :カラビナ×10,ロックビナ×7,ヌンチャク×3,スリング120cm×6,60cm×6
      ロープ(8.5mm 50m×2)



2010年5月4日(快晴)

上高地  6:06
明神   6:56
徳沢    −
横尾   9:26
涸沢  12:08
  


 午前2時、幻舞宅を出発。連休ということで高速を使って松本を目指す。距離は片道約50kmほど遠回りとなるが、沢渡までの時間は約30分短縮される。一般道を走っても、三才山トンネルで500円也を徴収されるため、高速を使っても料金は500円しか違わないし、何よりも運転が楽だ。

 途中、コンビニで食料を仕入れたりして、沢渡へは5:00着。沢渡からはタクシーで上高地へ入る。

 沢渡〜上高地のシャトルバスは片道1200円、往復2000円だが、状況によっては下山時に上高地発の最終バス17:05に乗り遅れる可能性があるため、往復乗車券は購入できない。

 タクシーは定額制で片道4000円なので、3人で乗れば1人あたり1330円となり、バスの片道料金とほとんど変わらないので、タクシーを利用した方が快適で早い。
       

 6:06上高地を出発。ここから横尾まで11kmの長い林道歩きとなる。

 この林道を歩くのは、ドクター,幻舞は数回目、仙人に至っては100回は越えているが、何度歩いても横尾までが遠く感じる。

 どんな山行でも、アプローチの林道歩きは長く苦痛だ。

 出発直後は、空は薄い雲に覆われていたが、時間の経過とともに雲はなくなって青空となり絶好の登山日和となった。

 明神でトイレタイム、徳沢で大休止を取り、横尾に着いたのが9:26分。

 今日は涸沢までで、早い時間についても特にすることもないため、通常は2時間半程度の行程を3時間半とノンビリ歩く。

 雪の多い年は、横尾大橋を渡ってすぐに夏道を離れて沢通しのルートとなっているが、今年は横尾までルート上に全く雪はなく横尾から先も所々で雪が登山道を覆っているものの、本谷橋までは夏道を辿った。
 
   
   本谷橋付近から夏道を離れて沢通しのルートとなる。連休中に大勢の登山者が歩いたらしく、雪はそこそこ締まっていて歩きやすい。

 日程的に下山してくる人がほとんどで、登る人は少ないと見ていたが、予想以上に下山者の割合が高い。この分だとヒュッテはゆったりと寝られそうだ。

 雪のだらだら登りにいいかげんうんざりした頃、ヒュッテの鯉のぼりが見えてきた。

 見た目では「もう一息」だが、ゴールが見えたここからが体感的には辛いところだ。
 12:08涸沢ヒュッテ着。テントの数もだいぶ減ったようで、テントを撤収した跡がやたらと目に付く。きっと昨日までは様々なテントでさぞや壮観な眺めだったろう。 
     
  ヒュッテの社長山口氏と仙人は以前からの知り合いで、今回山口氏の好意により通常料金でコタツ&ストーブ付きの個室を割り当ててくれたばかりか、夕食にはワインまでごちそうしていただいた。

 最終日とはいえ、近年まれに見る晴天に恵まれた連休で、最悪8畳間に8人なんて事態も覚悟していたが、予想外の特別待遇に感謝感激。

 しばし部屋でまったりしたあと、仙人,BJはスキーの足慣らし、幻舞は昼飯代わりにテラスで「おでん」を食べに行く。

 スキーの足慣らしも終わり、改めて3人でビールで乾杯。夕食は、社長自らテーブルに案内してくれ、我々3人のみで1テーブルの特別待遇。いただいたワインのほろ酔い気分もあり、楽しい夕食のひとときを過ごすことができた。

 それにしても、ヒュッテの夕食は山小屋の食事としては◎だと思う。以前は、山小屋の食事に文句を言ってはいけないなどといわれていたが、現実に食事の美味い不味いは大きな要素で、この点、ヒュッテでは昔から食事に力を入れており、他の山小屋がベショベショの不味いカレーを出していた時代にも、ちゃんとした食事を提供していたようだ。

 これだけ待遇がいいと、今後もあまり混まない時期には積極的にヒュッテを利用したくなってくる。
 


 月5日(快晴)

涸沢ヒュッテ   5:20
5,6のコル   6:41
5峰の頭     7:30
4峰の頭     7:57
3峰の頭    10:14 
2峰の頭    10:55
前穂山頂    11:35
岳沢ヒュッテ跡 13:50
上高地     15:46



 4:30起床、5:20行動開始。予報通り、朝から絶好の登攀日より。

 上を見ると、3人組の先行パーティが6,7のコルを登っているのが見えたが、普通、涸沢から北尾根を目指す場合は6峰から登ることはまれなので、このパーティは5,6のコルと間違えて登っているようだ。案の定、途中から5,6のコルへトラバースしている。

 しばらく登ってからふり返ってみても、我々の後から登ってくるパーティはいないようなので、今日は他のパーティをあまり気にすることなくマイペースで登れそうだ。

 5,6のコルへの登りでは、くるぶしから深いところで臑くらいまで潜るところがあり、この時期の重い雪と相まって、思ったよりも体力を消耗する。

 仙人,BJが交代で先頭を努め、5,6のコルへ。前日にはりきりすぎて膝の痛みに悩まされている幻舞は終始後ろを登る。

 我々が5,6のコルへ到着するのと入れ違いに、先行パーティが行動開始。我々はノンビリ大休止して、ここで朝食を取ることし、雄大な景色を眺めながらのエネルギー補給。 

   
 5,6のコルへの登り  5峰を登る先行パーティ
 先行パーティのトップが5峰の頭に着いた頃、我々も行動開始。ここからは当初の予定通り、幻舞トップ。今回、幻舞は北尾根登攀を最優先とするためスキーは持ってきていないので、山行前から北尾根は幻舞がトップで登ることになっていた。

 5峰への登りは、ハッキリしたトレースもあり、まだ雪もそこそこ締まっていたため、ナイフリッジ通過の際に慎重になる以外は特に緊張するところはないが、5峰の頭から4,5のコルへの降りが悪く、ロープをだすほどではないがそこそこ緊張させられる。

 4峰は、5峰よりも急角度で、途中に岩場のアイゼン登攀を強いられるところもあり、ロープなしで自信を持って登れる限界という感じ。

 途中の大岩を越えるところで先行パーティのラストが苦労している。プレッシャーをかけないように、少し離れたところで待機。

 ルートが空いたところで取り付くと、特に難しいところではなくここで苦労するようだと核心の3峰が辛いかも。
     
 5峰のナイフリッジをゆく 5峰頂上を見上げる  5峰頂上より。5,6のコルのテン場跡が見える 

 下右写真の岩峰をを岳沢側へ巻くトラバースが悪いらしく、ここでまた先行パーティに追いつく。

 このトラバースは、技術的な困難さはないが、足元の雪が崩れたら一巻の終わりという、いわば運任せの要素があり緊張した。

 悪いトラバースをクリアしたあとは急角度の雪壁となっていて、ピッケルがもう一本欲しくなるが、今更どうしようもないので慎重に登るより方法が無い。

 この雪壁で先行パーティのラストからルートを譲ってもらい、さらに4峰の頭でトップにも先頭を譲ってもらって我々パーティが先頭となる。 

 ラストの様子から、3峰でかなり待たされるかと思っていたのでこれで一安心。
4峰  4峰の登り 
 
 
 4峰の頭はそのまま通過し、3,4のコルで休憩を兼ねてのクライミングの準備をする。事前の調整通り幻舞がリード,ビレイヤーBJ,仙人は写真担当。

 順番を譲ってもらった後続パーティを待たせては悪いので、休憩もそこそこにクライミング開始。

 トレースに従って、ビレイ点から岳沢側に3〜5mくらいトラバースして上を見ると、ハーケンが連打された顕著な凹角がある。トレースはこの凹角と、さらに岳沢側をトラバースする2つがあったが、凹角の方が手応えがあって面白そうだし、ハーケンでランニングも取れるので凹角を登る。

 当然のごとくこの時期はアイゼン,手袋でのクライミングとなり、アイゼン登攀の経験が少ない幻舞は気合いを入れて取り付くが、いざ登り始めてみると見た目ほど難しくはなく、出だしの一歩で高い位置のスタンスに足をあげるのが大変な程度で体感V級。手袋が軍手でホールド感がいいということもあるが、適度な緊張感で快適なクライミングとなる。

 凹角を抜けると岩混じりの雪壁となり、足元の雪が崩れないように注意を要するくらいでクライミングの要素はなく、普通の雪壁登りとなり、残置スリングのかかった3連打ハーケンでピッチを区切る。 
 
 北尾根の核心、3峰。赤ラインが登攀ルート。
 この後のピッチは50〜60°くらいの雪壁で、所々で岩が混じるもののクライミングの要素はほとんど無く、技術的に難しいところはない。ただ、足元の雪を崩さないように神経を使う。

 参ったのはロープが湿って流れが悪くなったことで、ロープを出すのも手繰るのも一苦労。クライミングの要素がないため、登攀速度もその分速くなり、ビレイヤーのロープ操作が間に合わない。

 フォローのビレイのため、ATCガイドにいつもの調子で
ガイドモードでロープをセットしたからもう大変! 仙人,BJの登攀速度に手繰りが全く追いつない。(頼むからもっとゆっくり登って)

 結局、どんなにがんばってもロープの手繰りは登攀速度に遠く及ばず、2人とも余ったロープを手に束ねての登攀となる。2人はフォローなのにムチャクチャランナウトしている状態で登っていることになるし、ビレイしている幻舞は腕がパンパンになってヒーヒー言ってるし、ある意味辛い(?)登攀となった。

 3峰は4ピッチくらいで登り切ったと思う。ロープの手繰りにばかり気を取られ、ピッチ数は記憶にない。
(幻舞って馬鹿だろ)3峰の頭は適当なビレイ支点が無く、やむを得ずスタンディングアックスビレイとする。実は幻舞が実戦でこのビレイ方法を行うのは初めてで本で見ただけの頼りない記憶でビレイする。たぶんやり方は間違っていないと思うが・・・大丈夫か?そんなんで。

 まあ、仙人,BJがこの程度の雪壁でミスする可能性はほとんど無いので、多少ビレイに不安があっても問題ない。(無責任モード全開の幻舞)

 3人揃ったところで3峰の頭から登ってきたルートを見下ろすが、後続パーティの姿が見えない。そう言えば、2ピッチ目まで聞こえていた声も聞こえなくなっている。

 トップが3峰を登り始めたらしい声はしていたので、途中で登攀を中止して3,4のコルから下山したようだ。たしかに、パーティの力量が揃っていないし、失礼だが、我々が見る限り、必要な技術を持っていないメンバーがいたようなので、賢明な判断だったかも。
     
 3峰の登り   3峰の登り  3峰頂上

 2峰は、見た感じではロープは必要なさそうだが、気温が上がって雪が緩んできているため、万一に備えて仙人の指示により前穂山頂までスタカットで登ることにする。

 2峰の頭には懸垂下降用の残置ビナがあったが、岳沢側のトレースに従ってクライムダウン。山頂までもうひと登り。 


 ← 2峰

2峰山頂より1,2のコルへクライムダウン →


 11:35分、前穂高岳山頂。

 ヒュッテから約6時間。幻舞,BJは初めての前穂登頂となった。

     
 
  山頂でクライミングギアを片付け、ついでにエネルギー補給してから前穂高沢を下山開始。仙人,BJはスキーで幻舞はツボ足&シリセード。

 幻舞が遅れるのは確実なため、2人がスキーの準備をしている間に先行して下山開始。思ったよりも雪が締まっていて、かなりシビアな降りとなる。2度足を滑らせて滑落するが、スピードこそ出ないもののピッケル制動だけでは止められず、アイゼンを蹴り込んでやっと停止。冷や汗をかく。
怖かったーーーーー

 仙人は快調にスキーで滑り降りているが、BJは滑り初めてすぐに姿が見えなくなった。しばらく待ってもいっこうに降りてこない。ちょっと不安になった頃に姿を現したが、スキーの調子が悪く、すぐに外れてしまうため、スキーは諦めてツボ足で降りる準備をしていて時間がかかったようだ。そうとわかれば一安心。

 しかし、ツボ足で降りるのもかなり緊張する。幻舞は膝の痛みもあってクライムダウンスタイルで降り始める。時間はかかるが正面を向いて降りるのはちょっと怖い。そんな幻舞を尻目に、BJは正面を向いてかなりの勢いで降りてきて、あっと言う間に幻舞に追いついた。
長生きできんぞ、BJ。

 遅れた幻舞は斜度が多少緩くなり、雪も緩んできたのを幸いに必殺のシリセードでスピードアップを図る。斜度が多少緩くなったとはいっても、かなりのスピードが出るのでスリル満点のシリセードとなった。あーーーケツが冷たい!
     
     
 

13:20頃、安全圏に到達して一安心。あとは上高地まで淡々と歩くのみ。途中、雪で埋もれた夏道を見失い、20分の藪漕ぎというアクシデントはあったが、15:46無事上高地へ到着。

 天候に恵まれ、記念すべき「山遊人の会  Moss Back」の第一回春合宿は楽しく幕を閉じた。


(幻舞 記)

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